その場の空気を360度で思い出に残すだけでなく、周りの人たちとのコミュニケーションのツールにもなる、360度カメラのTHETA。

今回は、リコーで最もTHETAを使っている株式会社リコー 加藤茂夫 常務執行役員(上写真左、※1)に、THETAの使い方や魅力について語って頂きました。対談相手はTHETA事業部 藤木仁 事業部長です。

コミュニケーションツールとしてのTHETA

藤木 THETAは2013年に発売開始し、約6年が経過しました。当初はその場の360度空間をワンショットで撮影し、SNS等での発信を通じてコミュニケーションを楽しんで頂くことを目的として発売しましたが、現在はSNSでの発信だけでなく、例えば旅や家族の思い出を360度で振り返るためのツールとして、また、不動産等ビジネス用途でも多くの皆さまにご活用頂いています。

昨年社内でTHETAに関するアンケート調査を行ったところ、「ほぼ毎日THETAを使っている」と回答された方が2名おり、そのうち1名が加藤さんでした。普段、どのようにTHETAを活用されていらっしゃるのでしょうか?

加藤 THETAは初号機から使っていますが、使い始めて少し後の2015年から2019年春まで、サステナビリティ推進本部長としてリコー全体のサステナビリティ経営を推進していました。サステナビリティ推進本部長に就任してから、社外の方々との会合や、自社のサステナビリティ事業についてセミナーやイベントで登壇する機会も増えました。セミナーでは時に数百人の方々の前で話をするのですが、コミュニケーションがどうしてもこちらからの一方通行になりがちで、観客の方々ととなかなか繋がりにくいと感じていました。

そのため、ある時から覚悟を決め、どんなイベントやセミナーでも、最後に観客の方にTHETAを向けて、また時には観客席に降りて、THETAで記念撮影をさせてもらうことにしました。THETAを使うと、相手がたとえ何百人だったとしても、周りの人たちとすっとコミュニケーションが繋がることを感じたためです。

藤木 それはすごいですね。初対面の多くの方々に向かって「THETAで撮りましょう」と言い出すのは、なかなか勇気がいることだと思います。

加藤 半ば強引です(笑)。「撮ってもいいですか?」ではなくて、「撮らせて頂きます!」「笑顔をお願いしまーす!」と撮影させて頂いています。


【THETA Vで撮影:事業部のメンバーと】

また大きなイベントだけでなく、社外の方々との少人数での会議でも最後にTHETAを取り出し、「記念に撮らせてください。」と撮影させて頂いています。そうするとそこにいる方々から、「これは何ですか?」「どこのメーカーが作ったものですか?」など色々な反応があり、そこでまたコミュニケーションが生まれるわけです。

THETAで撮影するときいつも皆さんに、「これは単なる360度の記念撮影ではありません。このカメラが皆さんの事業のどんな場面で活用できるか、ぜひアイディアを頂きたい。」とお伝えしています。そうすると、そこにいらっしゃる方々から「自社で具体的にこう使ってみたい。」とアイディアを頂いたり、また別のコミュニケーションが生まれるのです。

また、そこで撮影した360度画像はtheta360.comにアップロードして、お会いした方々に別途メールでURLをお送りしています。画像のURLをメールで送ることで、フォローアップとしてのコミュニケーションにもなります。

相手がひとりであっても、数百人であっても、一度にコミュニケーションが取れる。そんなTHETAのコミュニケーション能力の高さが、自分にとっては最大の魅力です。

藤木 なるほど、THETAの撮影時だけでなく、その後のフォローアップも含めた2度のコミュニケーションとして活用されているのですね。

ところで、ほぼ毎日THETAで撮影されているということは、これまで撮影された枚数はかなりの数になるのではないでしょうか?

加藤 theta360.comの自分のアカウントには、2,000枚近い画像がアップされていると思います(笑)。SNSにアップせず、相手の方に個別にURLで写真をシェアしています。

誰ひとり撮り残さないカメラ

加藤 サステナビリティ事業本部長時代、ある時からTHETAのことを「SDGsカメラ」と呼んで使っていました。

【THETA Vで撮影:佐賀大学気球】

藤木 それはどうしてでしょうか?

加藤 SDGsとは、国連が掲げる「Sustainability Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。2030年までに国際社会で達成する必要がある17のゴールと169のターゲットで構成され、地球上の「誰一人取り残さない(Leave no one behind)」ことを基本理念としています。

リコーはSDGsへの取り組みを全社で推進しているのですが、あるとき社内の方から、「SDGsの基本理念でもある“誰一人取り残さない”は、“誰一人撮り逃さない”360度カメラのTHETAみたいですね。」と言われたのです。少しシャレみたいではあるのですが、「なるほど!」と思い、早速THETAを「SDGsカメラ」と呼んで活用することにしました。

藤木 それは新しい解釈ですね。

加藤 ただ、勝手にSDGsの名前を使ってはいけないと思い、国連本部に伺いSDGsに関する情報交換をさせて頂いた際に、THETAをSDGsカメラと呼んで良いかどうか、国連本部の担当の方に伺いました。国連本部の方からは、「SDGsの名前を使うことは全く問題ないので、その代わりぜひSDGsを会社としてコミットし、広めて頂きたい。」とおっしゃって頂きました。

それからセミナーで登壇するときなどにはTHETAを取り出し、「このTHETAというリコーの360度カメラを、自分はSDGsカメラと呼んでいます。なぜだと思いますか?」と、観客の方々へのクイズとして活用していました。

藤木 そのようなかたちでTHETAの知名度を上げて頂いていることは、大変ありがたいことです。

THETA Z1について

藤木 昨年末、加藤さんにはTHETA Z1を贈呈させて頂きました。昨年5月に発売したTHETA Z1は、THETAのフラッグシップモデルとして1インチセンサーを取り入れハンドヘルド360度カメラで静止画の最高画質を目指しました。技術的にも、製造的にも、リコーでないと作れない製品になっています。
Z1をお使い頂き、いかがでしょうか?

加藤 非常に素晴らしいカメラです。これまでTHETAの初号機・Vと使ってきましたが、Z1を使い始めて良いと思った点が3点あります。

一点目は、画像の許容範囲が格段に上がったことです。少し薄暗い室内や店内、もしくは薄暗い夕暮れ時の時間帯など、今までTHETA Vで撮影すると暗く映ってしまったような場所でも、少しの明かりだけで鮮明に映るようになりました。

【THETA Z1で撮影:八十八ヶ所廻り成就院】

二点目は、Z1本体のボタン(Fnボタン)で簡単にセルフタイマーに切り替えることができるようになったことです。THETA Vも本体でセルフタイマーに切り替えることができるようですが(※2)、その機能に気が付かず、VではいつもスマホにWifi接続してからTHETAのシャッターを遠隔で操作していました。直接シャッターボタンを押すと手写りが目立つため、綺麗に撮影したかったためです。

ただ、スマホから遠隔でシャッターを押そうとすると、シャッターを押す瞬間に自分だけスマホの画面を見ていたりすることも多々ありました。Z1はスマホとWifi接続しなくても、本体上で簡単にセルフタイマーに切り替えることができるので、Z1をテーブルの真ん中に置いてさっと撮影できとても便利です。

三点目は、このZ1専用のレンズキャップ(TL-2)です。レンズも保護してしまえるし、キャップをTHETAの下に付ければそのまま安定した状態で置くことができ、三脚が不要になりました。また、このまま手に持っても安定感があり持ちやすいことも気に入っています。

藤木 このキャップの硬さが絶妙ですよね。コンセプトとしては、キャップだけ持っても絶対にTHETAが落ちないという思想で、開発者が設計しました。

加藤 このキャップがあることで持ちやすく三脚代わりにもなるという点は、小さなことですが自分にはとても便利なポイントです。実は以前使っていたTHETA Vは、三脚を使いすぎたのか、三脚を入れたままTHETAを倒してしまったときに、三脚が根本からぽきっと折れてしまったことが原因で、ネジ穴が壊れてしまったのです。

藤木 三脚が金属疲労で折れてしまうくらい、頻繁にTHETAを使用して頂いていたということですね(笑)。

ちなみに、今月リリースされたファームウェアのバージョンアップで現行の機種(THETA SC2・V・Z1)はすべて市販のBluetoothリモコンが使えるようになりました。遠隔でシャッターボタンの操作ができますのでぜひお試しください。

THETAの可能性

藤木 THETAの存在価値は何かと改めて考えた時、「360度すべて撮り逃さない」ということですが、言い方を変えれば「裏も表もすべて写す」ということでもあります。物事には裏と表があります。例えば社会では、豪華で美しく発展している地域もあれば、その裏には労働を搾取され貧困に苦しんでいる人もいますし、経済発展の裏には環境問題があったりします。

通常のカメラでは切り取った一部しか映りませんが、THETAでは裏と表の両方のレンズで全てを写せるので、綺麗な景色を切り取るだけでなく、そうではない裏の景色も写し直視するツールにもなればいいなと思っています。更に言えば、将来的に表も裏も360度で良い世界になっていければと思っています。

加藤 THETAには、リコーが今後色々な事業にチャレンジしていくときに、360度空間をキャプチャーするエッジ・デバイスとして、様々な場面で活用できると思います。360度カメラのトッププレイヤーとして、今後も期待しています。

※1加藤茂夫 株式会社リコー 常務執行役員プロフィール:

1982年リコー入社。約20年間の欧州駐在を経て、2010年グローバルマーケティング本部MDSセンター所長、2015年サステナビリティ推進本部長を歴任。2019年よりコマーシャルプリンティング事業本部長に就任。

※2セルフタイマーモードで撮影 V/SC

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