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RICOHとJAXAで共同開発し、国際宇宙ステーション(ISS)から様々な画像を撮影した宇宙仕様THETAが地球に戻ってきました!

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Posted date : 2021.12.09

2019年9月25日に、宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機で打ち上げられ、ISS「きぼう」日本実験棟の船外で様々な360°の全天球画像を撮影した宇宙仕様THETA(RICOH THETA Sを基に宇宙環境でも耐えられるように開発したもの)が、2021年春に、無事地球に戻ってきました!

宇宙仕様THETA は、JAXAとソニーCSLが共同開発した小型光通信実験装置「SOLISS」(Small Optical Link for International Space Station)に搭載され、SOLISSが地球にレーザー光を放つ際に稼働する二軸ジンバル機構の動作確認と、周囲360°の様々な画像の撮影を行ってきました。

帰還した宇宙仕様THETA は、今後コロナの状況が改善しましたら、JAXAの施設で特別公開される可能性がありますので、お楽しみに!

帰還した宇宙仕様THETAから取り出された最新画像

これまで本メディアのTHETA Labでは、宇宙仕様THETAがISSで撮影した画像を順次公開(https://www.thetalab.ricoh/article/2651/)してきましたが、今回帰還した宇宙仕様THETAから、更に新たな画像を取り出すことができました。

取り出された一連の画像をつなぎ合わせて、タイムラプス動画にすることができましたので、ご覧ください。


国際宇宙ステーション(ISS)から切り離された宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)が
地球への再突入に向けて高度を下げていく様子

こちらのタイムラプス動画は、ISSから切り離された「こうのとり」8号機(HTV)が地球への再突入に向けて高度を下げていく様子を撮影した大変貴重な映像です。

ISSでの使用を終えた不用品は、HTVに載せられてISSから離され、大気圏に再突入し、HTVと共に焼却廃棄されます。
その際、ほとんどが大気との空力加熱で燃焼しますが、最後まで融解されずに残った破片は、人が住んでいる島などがなく、船舶の航行に適さない海域に落下させます。
HTVの大気圏再突入に関する詳細は、JAXAのFAQに載っていますので、興味のある方はご覧ください。

このタイムラプス動画から、自転している地球にHTVを再突入させる際に、地球上の人々の生活に影響が無いよう、切り離すタイミングや方向などを正確に計算しているのが想像できます。高校や大学で学ぶ物理は、このようなところに応用されているのですね。

私たちは日常的に宇宙飛行士が地球に戻ってくるのをニュースで見かけますが、物資だけで地球に戻す場合があることや、その作業は簡単ではなく、タイミングや方向を正確に計算したうえで成り立っていることを、このタイムラプス動画からも学ぶことができると思います。

今回の取り組みの中で乗り越えた課題について、JAXAの神田様に伺いました

THETAをISSの船外に搭載するにあたって、JAXAでは様々な技術課題をクリアしました。
今回のTHETAのミッション完遂には、課題解決に向けて尽力してくださった技術担当の方々の存在が欠かせません。
当時、JAXAの「宇宙探査イノベーションハブ」の研究員として、技術課題に対応した神田大樹様に、苦労された点やどのようにご対応されたのか?などを伺いました。

技術課題と苦労した点

JAXA神田: 最初に苦労した点は、個人的なことですが、私がJAXAに就職した直後であり、宇宙機の開発に直接携わったことがない中で開発を進めることになったため、わからないことだらけだったことです。

前の年まで学生として、イオンエンジンという「はやぶさ2」で使用されるようなエンジンの研究をしていましたが、宇宙機に搭載するには何をどのように進めればよいのか、きちんとした知識はありませんでした。開始から打ち上げまで2年程度の短期間で、さらに少人数のメンバーで進めなければいけなかったため、自分なりのやり方でとにかく前へ進めていきました。

研究と同じようにトライ&エラーを繰り返して、自分の手を動かして臨機応変に対応したため、今回のような短期間で間に合わせることができたのではないかと思います。

2つ目に苦労した点は、宇宙仕様THETAの制御装置の構築です。

THETAをSOLISSに搭載するということは、THETA自身を衛星に搭載するためにカスタマイズすることも必要ですが、宇宙仕様THETAを制御するための機器も開発してSOLISSに搭載する必要があります。
制御装置の機能としては、主に宇宙仕様THETAや制御機への電源供給と温度制御、各装置間の通信制御があります。
どのような機能が必要かを考え、そのために必要な実際のハードウェアを、放射線試験や通信試験などを行ったうえで選定しました。

例えば宇宙仕様THETAへの電源供給について取り上げますと、THETAのバッテリーは安全上の観点から取り外す必要があったため、制御装置から直接配線をつなげて電源を供給することとしました。
しかし、撮影時のラッシュカレント(電源投入の初期段階で、定常よりも大きな電流が流れる現象)時に配線での電圧降下により宇宙仕様THETAがOFFになる現象が発生したため、対処が必要でした。

また宇宙仕様THETAと制御装置のデータ通信はUSBを用いているのですが、通常設計のままであるとUSBバス電源が宇宙仕様THETAに供給されてしまうため、USB電源からは電源が供給されないようにする必要がありました。
しかし調査を進めていく中で、電源供給のタイミングにより、USB電源から宇宙仕様THETA回路へ電源が供給されるケースがあることもわかりました。

このような宇宙仕様THETAの挙動に関しては、リコーさんに技術支援をしていただき、進めることができました。他にも、別機器との組み合わせにより初めて発生する事象も多くありましたが、一つ一つ原因究明を行ったうえで対処し、制御装置を完成させました。

3つ目の苦労は、ISSに搭載するための安全審査を通過することです。

例えばTHETAはカメラですので、ガラスが使われているのですが、宇宙飛行士が割れたガラスで怪我をしてはいけないため、振動試験を行って打ち上げ環境に耐えられることを示し、万が一割れた場合に破片が出ないようカバーの作成を考える必要がありました。

他にも船外に出した場合も宇宙飛行士が船外作業中に触らないように、宇宙仕様THETAを設置する個所を“No Touch Area”に設定する必要がありました。どのようなことが危険であると分類されるのかわかりませんでしたし、それらをどのように対処すれば良いのかもわからなかったため、苦労しました。
宇宙飛行士のいるISSへ搭載するには、多くのことをチェックする必要があることを学びました。

本取り組みを振り返って

JAXA神田: 本取り組みを振り返り、すばらしい写真をたくさん撮ることができたため、大変嬉しく思っています。特に「こうのとり」8号機のISS離脱のタイムラプス動画をVRゴーグルで最初に見た時はとても感動しました。

映像コンテンツを是非とも皆さんにもVRで見ていただければと思います。実際に宇宙に行った感じになる映像を撮影できるのは全天球カメラならではだと思います。
これからもJAXAの取り組みの中で、火星や小惑星、月などの様々なところにTHETAを持って行って、撮影した360°映像で是非とも皆さんにも体感していただきたいなと思っています。

JAXA 神田様:宇宙仕様THETAの取り組み当時は、「宇宙探査イノベーションハブ」の研究員
現在は技術試験衛星9号機(ETS-9)の電気推進系の開発を担当している(提供:JAXA)

神田様、お忙しい中お話を聞かせていただき、どうもありがとうございました!
近い将来、THETAが宇宙で更に活躍する機会ができるのを、楽しみにしております。

 

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リコーニュースリリース:https://jp.ricoh.com/release/2019/0828_1/
【レポート】宇宙初搭載 RICOHとJAXAの共同開発によるTHETA S ISS(国際宇宙ステーション)船外 搭載 発表会
https://www.thetalab.ricoh/article/2189/
【宇宙からの写真】宇宙初搭載 RICOHとJAXAの共同開発によるTHETA S ISS(国際宇宙ステーション)船外搭載 第四弾更新
https://www.thetalab.ricoh/article/2651/

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