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新たに“Dual Fisheye RAW”プラグインがTHETA Z1向けに登場!Ichi HirotaさんにTHETA用アプリ&プラグイン開発秘話をインタビューしました

Posted date : 2021.06.18

360度カメラのRICOH THETA Z1とTHETA Vは、「プラグイン」と呼ばれる拡張機能に対応しており、後から機能を追加することが可能です。RICOH THETA PLUG-IN STOREでは、リコーが提供する純正プラグインの他に、世界中の開発者たちが自由な発想で開発した様々なプラグインが紹介されています。

THETAの数あるプラグインの中でも、世界中の方々に最もダウンロードされているプラグイン(*)が、Dual Fisheyeプラグインで、これは日本人のTHETAユーザーIchi Hirotaさんが個人で開発したプラグインです。中でも「HDR-DNGモード」と呼ばれる、THETA Z1内で簡単に一枚のHDR-DNG画像を生成する機能は、ダイナミックレンジの広い360度画像編集が可能となるため、バーチャルツアー撮影などを目的とする世界中のパノラマフォトグラファーたちの高い注目を浴びています。

そして今回、新たに“Dual Fisheye RAW”プラグインとして、撮影時間が大幅短縮され、より使いやすくなって新登場!

Dual Fisheyeプラグインの他にも、これまで数多くのTHETAアプリを独自開発されてきたIchi Hirotaさん。そんなIchi Hirotaさんに、THETAとの出会いや、プラグイン開発への秘めた想い、そして新しくリリースされたばかりの“Dual Fisheye RAW”の概要などを伺いました!

*2021年6月時点

IchiさんとTHETA

IchiさんとTHETAの出会いについて教えてください。

本職は研究開発のエンジニアです。登山が趣味で、そこで見た景色をパノラマで思い出に残したいと思い、最初は魚眼レンズを使って撮影していました。2013年に初代THETAが発売されたことを知り、その手軽さに衝撃を受け、ライフログ的にTHETAを使い続けていました。

Ichi HirotaさんとTHETA

初代THETAはセルフタイマーが無かったため、どうしても撮影ボタンを押す指が映り込んでしまいました。そこで、自撮り棒を使ってできるだけ景色を綺麗に撮影したいと思い、THETAを改造して「有線シャッター」を作りました。それが、自分がTHETAに欲しいと思う機能を、自分自身で開発してみたいと思うようになったきっかけです。

趣味でTHETAの機能開発とは、さすが本職が開発者だけありますね。Ichiさんはこれまで様々なTHETA用の独自アプリやプラグインを開発されていますが、ご自身のお仕事もお忙しい中、その原動力はどこにあるのでしょうか?

自分がTHETAに欲しいと思う機能を作っているだけです。THETAに関しては、できるだけ「モバイルで手軽さを求めたい」という一心で、自分が欲しいアプリやプラグインを作り続けています。THETAは自分の趣味の一つでもあるので「できるだけ長くTHETAの事業が続いてほしい」という気持ちもありますし、世界中のプロフェッショナルな写真好きの人たちがどういうものを求めているのか?ということについての純粋な興味もあります。

Photo by Sam Rohn – Spherical Image – RICOH THETA


Dual Fisheye プラグイン で撮影・編集

*Photo by Sam Rohn

IchiさんにとってのTHETAの魅力を教えて下さい。

THETAは世界初のコンシューマー向けワンショット360度カメラで、超薄型にも関わらず圧倒的な静止画画質だという点です。特に360度画像のスティッチの精度で、他社と差別化していると思います。また、THETA VとZ1はプラグイン用SDK対応されているので、自分好みにカスタマイズできるという点も、エンジニアである自分にとっては「楽しいおもちゃ」という感じで、THETAを楽しませてもらっているポイントです。

モバイルワークフローの追求

IchiさんにとってのTHETAの魅力は「モバイルでも手軽に撮影・編集できる」という手軽さなのですね。

はい、PCを使わずモバイルのみでTHETAの撮影・編集を手軽に、且つ高品質に楽しみたい、という一心で、これまで色々なアプリを独自に開発してきました。非公式のアプリでTHETAの画像を編集した際に、メタデータと呼ばれる360度画像データ情報が消えてしまったり、画像が傾いたりする点を調整する「meta360」や「edit360」という独自のアプリを開発したのもそのためです。

アプリ:meta360

メタデータと呼ばれる、360度画像データ情報を再度加えるアプリ↓

アプリ:edit360

360度画像の傾きを補正するアプリ↓

THETA Z1のRAWデータの画像編集を行うには、公式ではPC前提ですが「モバイルでTHETA Z1のRAW画像がしたい」という気持ちが強かったのでしょうか。

そのとおりです。2019年にTHETA Z1が発売になり、THETAシリーズで初めてRAWデータ対応になりました。ただ、DNGファイルと呼ばれるTHETAのRAWデータは、スマホには引き取ることができません。THETA Z1のRAWデータを現像したい場合は、一旦PCでデータを引き取り、PCアプリのLightroom Classicで現像した上で、THETA Stitcherという公式プラグインでDual Fisheye(魚眼)状の画像を360度画像に繋ぎ合わせる必要があります。

THETA Z1で撮影したRAWデータ

そこで私は、このフローをスマホのみで完結させるアプリを作りたいと考え、DNGファイルをWiFi経由でスマホに直接転送するためのアプリ「Z1 DNG Transfer」、そして、Lightroom モバイルで編集したDual Fishの画像を、スマホ上で360度に繋ぎ合わせるためのアプリとして「Z1 Stitcher」を開発しました。DNGファイルはデータサイズが大きいのですが、できるだけ早く転送できるような工夫も行なっています。

アプリ:THETA DNG Transfer

THETA Z1のRAWデータをスマホに転送することを可能にしたアプリ↓

 

アプリ:THETA Z1 Stitcher

スマホのLightroomなどで画像編集したDual Fish状のデータを、スマホ上で360画像に繋ぎ合わせるためのアプリ↓

また、Stitcherは動的つなぎ処理が肝になります。「Z1 Stitcher」は、360度画像の動的つなぎ処理のアルゴリズムをイチから自分で開発し、実装しました。公式に近い精度の動的つなぎのスティッチができていると自負しています。

Dual Fisheye プラグインのHDR-DNGモード

Ichiさんが開発されたDual Fisheyeプラグインの、THETA Z1専用の「HDR-DNGモード」は、この一年、世界中のパノラマフォトグラファーたちの注目の的でしたね。彼らにとって、何が画期的だったのでしょうか。

HDR(ハイダイナミックレンジ)とは、明暗差を丸ごと余すことなく取り込んだダイナミックレンジの広い画像を生成することのできる撮影・画像処理の技術です。
360度画像は全方向をひとつの画像に収めるため、どうしても明暗差が大きくなりがちです。例えば室内で撮影した場合は、窓の外が白飛びしたり、椅子やテーブルの下は影で真っ黒につぶれてしまったりしますが、このHDR技術によって生成された画像を適切にトーンマッピングすることで明暗差を抑えた画像を作り出すことができるのです。

Dual Fisheye プラグインで撮影・編集

*Photo by Toyo Fujita

一般的には、露出を変えて複数枚撮影した画像を、一枚に合成する処理が必要になります。THETAにもHDR合成モードがあり、フルオートの処理で便利ですが、自分自身で画像を調整することはできません。また、自分で複数枚の撮影設定をマニュアルで行う「マルチブラケットモード」を活用する場合、自由度は高いのですが、環境に合わせて自分自身ですべて設定し、またPCでその画像を合成する手間が生じます。パノラマフォトグラファーの方々は、これまでかなりの労力をかけてこういった画像を一眼レフ等で撮影し、編集されていたはずです。

私が開発したDual FisheyeプラグインのHDR-DNGモードは、半自動で、その撮影から合成までの処理を素早く行うことができる点が特徴です。THETA Z1本体のボタンのみでも設定可能です。

※使い方や注意点詳細は、こちら!

HDR-DNGモードは、元データは真っ黒なデータですが、色の調整幅が広いことに驚きました。

「Lightroom Classicで表示すると真っ黒な画像だ」というようなコメントを頂く事もありますが、異常ではありません。取り込んだ後に適切に編集して頂くと、広いダイナミックレンジを実感できるはずです。

また、「Macにダウンロードするとサムネイルがピンクになる」という指摘もありますが、どうもMac自体はHDR-DNGを正しく表示できないようです。OSがカメラに追いついていないようですが、今後この辺りのサポートも進むとよいなと思います。

HDR-DNGデータ編集前:

HDR-DNGデータ編集後:

また、Androidのみに対応しているアプリ「Dual Fisheye Plugin Remote」を使うことで、スマホ上からGPS位置情報や絞り値、EVオフセットなどを調整することも可能です。

残念ながら現状ではAndroid版のアプリしかありません。ただ、より画像や撮影時の手軽さに拘る方には、便利なアプリではないかと思います。

パノラマフォトグラファーの中には、このアプリだけのために安価なAndroidの端末を購入して頂いている方もいるようですね。ところで、HDR-DNGのデータは通常のDNGデータよりもかなり重くなるのでしょうか?

Dual FisheyeプラグインのHDR-DNGモードは、最大9枚のDNGファイルを、一枚のHDR-DNGファイルに合成しています。ただ、ファイルサイズは通常のDNGファイルの2割増し程度に抑えています。THETA Z1本体の容量に空きがあれば、一度に最大150枚程度撮影することができるでしょう。(※)

※従来の19GBモデルの場合。最近新しく発売された51GBモデルであれば、Dual FisheyeプラグインのHDR-DNGモードを始めとした、RAWデータでの撮影を更に枚数多く撮影することが可能です。

より使いやすく。“Dual Fisheye RAW”プラグインが新たに登場!

今回Dual Fisheyeプラグインが、新たなプラグイン“Dual Fisheye RAW”となってリリースされましたね!

はい、THETA Z1のファームウェアアップデートによる機能アップに合わせて、Dual Fisheyeプラグインも新しいプラグイン“Dual Fisheye RAW”としてリリースしました。

HDR-DNGモードはもともと、「測光数秒」→「撮影20秒」→「保存30秒」トータルで約1分以内に抑えたいと考えて開発しました。特に、「撮影」の際は最大9枚の撮影を一枚づつ行うため、約20秒間身動きを取ることできません。今回のアップデートで「撮影」に要していた約20秒が、約1秒と大幅に短縮されました。これは、使い勝手の面でも大幅に向上されるのではないかと思います。

Photo by Sam Rohn – Spherical Image – RICOH THETA

Dual Fisheye プラグイン で撮影・編集

*Photo by Sam Rohn

例えば、バーチャルツアー撮影のような現場では、できるだけ手軽に短時間で数多くのポイントを撮影する必要があったり、撮影時に窓の外の人や車の動きを気にしながら撮影することもあるかと思います。撮影に要していた時間が約20秒から約1秒に大幅に短縮されたことで、撮影効率も大きくアップするでしょう。

今回、プラグインのアップデートではなく、全く新たなプラグインとしてリリースされたのはなぜでしょうか?

主に、以下の3点の理由です。

・新プラグインはZ1のみをサポート。RAWのみに特化する。
・まずはスピードを優先して最初はボタン操作だけのシンプルなものをリリース
・今後、ユーザーのフィードバックなどを通して機能を追加する見込み

現在お使い頂いているDualFisheyeリモートのアプリは、“Dual Fisheye RAW”プラグインには使うことができません。今後、新しいプラグイン用にもリモートアプリを検討したいと思います。撮影時間が大幅短縮され非常に使いやすくなったため、まずはぜひ、本体のみの操作で“Dual Fisheye RAW”をお試しください。

今後の新たな機能も、楽しみにしています!

※上記アップデートには、THETA Z1本体のファームアップと、“Dual Fisheye RAW”プラグインのインストール、両方が必要になります。

THETA Z1本体ファームアップの方法はこちら

“Dual Fisheye RAW”プラグインのインストールはこちら

モバイルワークフローの完成!

Ichiさんは、普段どのようにTHETA Z1で撮影されているのでしょうか?

私は普段、JPEGでの撮影は行いません。動き回る子供がいるため、通常はSingle DNGの撮影がほとんど。だた、いざというときは、THETA Z1でDual Fisheyeプラグインを立ち上げ、AndroidアプリからHDR-DNGモードで撮影します。Dual FisheyeプラグインのHDR-DNGモードを開発したことで、高画質な画像をモバイルのみで撮影・編集するフローをつくりあげることができました。

撮影後、THETA Z1とAndroidのスマホをUSBケーブルで接続し、スマホのストレージにHDR-DNGファイルを保存。Lightroomモバイルで現像します。

Lightroomにはプリセットをつくっているので、ほぼワンクリックで現像が完成します。

それをZ1 Stitcherアプリを使って360度につなぎ合わせることで、スマホのみでダイナミックレンジの広い360度画像が完成します。

HDR-DNGモードを使う方は、基本的にはPCのLightroom Classicを使って編集されているのではと思います。私は手軽さを求めて、スマホで編集することも多いです。子どもといるときはSingle DNGでの撮影も多いですが、子供を公園で遊ばせながら、片手間で撮影-現像まで行ったりもしています。

Post from RICOH THETA. – Spherical Image – RICOH THETA

スマホで編集したHDR-DNGの画像

スマホで編集したSingle DNGの画像

Ichiさんのプライベートショット、とても親近感が湧きます。今回リリースされた新規Dual Fisheyeプラグインで撮影時間が短縮されると、お子さんといてもHDR-DNGモードでの撮影が気軽にできそうですね。

今後の想い

世界中のTHETA Z1ユーザーからは、どのような機能についての要望があるのでしょうか?

Dual Fisheyeプラグインをモバイルからリモートで操作する「Dual Fisheye Plugin Remote」は、Android版しかありません。iOSのDual Fisheye用アプリについては、みなさんから色々と要望を頂いています。リコーさんにも実現に向けてご協力いただきましたが、どうしてもAppleさんからの承認が下りず、断念しております。プラグイン開発はあくまでも私の趣味の範疇で行なっているので、ご理解いただければと思います。

Dual FisheyeプラグインのHDR-DNGモードをTHETA Z1に標準対応してほしいという声もよく聞きます。ただ、色々クセがあるプラグインなので、公式で出すことは難しいのではと思います。こういったクセのある機能を、3rd Party製として出すのが醍醐味ではないかと思っています。

Post from RICOH THETA. – Spherical Image – RICOH THETA

Ichiさんが初めてHDR-DNGモードの撮影テストを実施し、効果を実感した思い出の場所

Ichiさんが、今後トライしたいことを教えてください。

THETAのプラグインやアプリ開発については、やりたかったことは大体できました。今後、後継機種で面白い機能が出てきたらまた色々つくってみたいなと考えています。

THETAのアプリ・プラグイン開発は、360度の名の通り、広く縁を結ぶものでした。色々な人との出会いで、THETAのプラグイン開発を始めるようになりました。FacebookコミュニティーでのTHETAユーザーの方々との交流も楽しいです。Dual FisheyeプラグインはYouTubeで海外の方々にも多く紹介して頂くようになりました。問い合わせを受けたりするのは99%海外の方です。THETAは日本の製品でもあるので、ぜひ日本のユーザーさんにも自分のアプリやプラグインを使ってもらい、交流できると嬉しいです。

新しくより使いやすくなった“Dual Fisheye RAW”プラグイン。またさらに世界中の多くの方に使っていただきたいと思います。今後の機能も楽しみにしています!

編集:平川

 

 

 

 

 

 

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