見た景色や思い出の記録だけでなく、空間表現として幅広く活用されている360度カメラのRICOH THETA。

今回は、THETAを建築の空間表現に活用されている山本圭太さんに、その驚きの活用方法をご紹介頂きます!

建築学とデッサン

山本さんが建築学を志すようになった背景を教えて下さい。

もともと小さい頃から絵を描くことが好きで、その中でも二次元の紙の上に三次元の奥行きをもった空間を表現することに魅力を感じていました。そういった興味から大学で建築学科に進みました。現在は早稲田大学大学院の修士課程に在籍し、建築のデザイン分野の研究をしています。

【山本さんのデッサン】

山本さんのデッサンは、温かみがあり素敵ですね。建築提案において、デッサンをどのように活用されているのでしょうか?

大学に入り、建築提案のコンセプトを伝えていくためにドローイング(線画)の表現の幅を広げていきたいと考えていました。特に最近はデジタルの技術と手描きの共存に興味があります。

建築に限らず、デジタルの分野ではどんどん新しい技術が生まれていると思います。そういった便利な技術の良い部分を取り入れながらも、それに手描きのイラストのもつ親しみやすさや肌触りを与えてみたいと考えています。

【山本さん大学一年生時代のデッサン:365°】

360度のような全天球の空間は、もともと興味をお持ちだったのでしょうか?

THETAの存在を知る前から、写真で切り取ったような一画面だけでなく、対面空間も合わせたような、より広角な空間を表現することが好きでした。

上の画像は大学二年生の頃に、学生の有志で行った「365°」展という展覧会の告知のために描かせて頂いたものです。名建築や学生が制作した作品を絵の中にちりばめるように描くなかで、球体のイラストになりました。

THETAの存在を知るずっと前に制作した作品とのことですが、THETAのリトルプラネット編集にも通じるイメージで、とても素敵ですね!

THETAを活用し始めたきっかけ

山本さんが、THETAを建築の空間表現で活用してみよう、と思ったきっかけを教えて下さい。

もともと、知り合いの方のSNSでTHETAで撮影された写真を見たことがきっかけで、THETAに興味をもっていました。

その中で、今回コロナウィルスの自粛期間で時間ができたこともあり、新しい表現を追求する機会として今年の春にTHETAを購入し、THETAを使った360度空間を映す、全天球型のイラスト表現に取り組み始めました。

【山本さんの360度画像作品:路地裏ダイバー】

THETAを使って、具体的にどのような空間表現をしてみたいと思ったのでしょうか?

これまで学生という立場で、建築を表現するツールとして模型、図面、建築のパース(内観、外観など)の三つを主に扱ってきました。
模型ではわからない実際建物の雰囲気を伝えるのが「建築のパース」で、1場面を切り取ったパースではわからない全体の構成を伝えるのが「建築の模型」だと思います。

しかし、THETAを使って撮影されたものには両方の間をつないでいくような表現の可能性があるように感じました。

【山本さんがお使いのTHETA SC】

360度空間すべてを見ることができ、アニメーション動画等にして絵自体を動かすことで、実際の雰囲気を伝えると同時に建物全体のイメージをすることができると思います。

とくに今は自粛期間で建築模型をはこんだり、直接相手には見せられないことが多く、そういう時だから新しい表現のツールがうまれる可能性があるのではないかと感じました。

360度空間を絵で表現する、というアイディアはとても斬新ですね!実際に撮影した画像をは、実際にどのようにイラスト化されたのでしょうか?

実際にTHETAで撮影した元画像をA3の紙にプリントアウトし、その上に市販のカーボン紙をのせてその上からトレースします。

【色を加える前のデッサン】

そこに色を加えたものを、スキャナーでデータ化し、THETA+アプリでリトルプラネットやアニメーション動画にして編集し、インスタグラム等の投稿に活用しています。

【実際の360度画像をトレースして色を加えた画像】

まさしくデジタルとアナログの融合ですね・・・!

THETAを活用した空間表現

こちらはどのような空間をイメージして作成された画像でしょうか?

これは、はじめて全天球型のイラスト表現に取り組んだものです。一作目として日常的に目にする風景を観察することからはじめようと考えました。

そこでコロナの自粛期間で家にいる時間が長くなったので、自分の部屋と時々買い物のために散歩をする際に見た風景をコラージュして描きました。

【山本さんの360度画像作品:34日目】

タイトルは「34日目」と名付けました。これを制作した日が、コロナの緊急事態宣言が発令されて、家に籠り始めてから34日目だったためです。いつか、ふたたびこの絵を見返した時に、この時期の自身の経験の記録として思い出すことができればと思っています。

下の作品は、「最終列車」と名付けました。実際に終電の中で撮影したTHETAの画像と、PC上でモデリングしてつくった画像を、組み合わせて作成しました。

【山本さんの360度画像作品:最終列車】

とても幻想的ですが、この3次元にモデリングした空間はどういったイメージなのでしょうか?

終電で寝ている人も多かったこともあり、夢の中で見ているような世界のイメージを表現しました。ちょうどコロナの時期で、座っている人たちの間隔が空いていた感じも表すことができました。

【3次元にモデリングしたCGの360度元画像】

THETAで撮影した画像と、PC上でモデリングした画像を組み合わせる手法は、とても新しいでですね。

3Dのモデリングでつくった現実では起こりえないような空間と写真でとったリアルな空間をコラージュさせ、それを水彩画で表現することで、夢の中にいるような不思議な体験を描ければ良いなと思って挑戦してみました。

【3次元にモデリングしたCG画像】

実際にTHETAの画像+イラストで360度表現をしてみた感想を教えて下さい。

いままでも建物を見に行ってスケッチをすることはあったのですが、体験をそのまま伝えられる部分に惹かれました。

【前川國男邸のデッサン】

建築という動かないかたいものを、THETAやTHETA+アプリを使って体験そのものを共有したり、他の人が簡単にそのイメージを編集可能な状態にすることで、柔らかいものに変えられる可能性があることが魅力的だと感じています。

【山本さんの360度画像作品:前川國男邸】

※初めて360度見たままをすべてデッサンして描く、ということに挑戦。

THETAを活用したことで、今までの空間表現とは違う良さや難しさはありましたか?

良さは、一般の方にもハードルがなく空間体験のイメージを共有できることだと思います。

【Light House(設計:YSLA)のデッサン】

イラストにしたときの難しさは、二次元の画像の上下左右のつなぎ目の調整です。画像の線をトレースする際にどうしても数ミリずれてしまい、THETAの360度画像にアップしたときに気が付いて修正する、ということを繰り返しています。

【山本さんの360度作品】

※THETA+アプリでアニメーション動画編集

地道で繊細な作業ですね・・・!山本さんは今後、どのような道を目指していらっしゃるのでしょうか?

建築のデザイン方面の仕事を目指したいと考えています。

山本さんの素晴らしいイマジネーションの空間表現に、THETAやTHETA+アプリを活用して頂き、とても嬉しく思います。今後も、素敵な作品を楽しみにしています!(平川)

使用機種:THETA SC

Instagram: @yanmokeita

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