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写真家 谷角靖が語るRICOH THETA Z1の魅力 特別インタビュー

Posted date : 2020.07.07

谷角靖さんはカナダを拠点に美しいオーロラや世界の雄大な風景を撮影する写真家です。
今回は谷角靖さんが写真家として活躍されるようになったバックグラウンドと、世界のフィールドで使い込んだ360度カメラRICOH THETA Z1の魅力について伺ってみました。

谷角靖さんの写真家としてのバックグラウンド

谷角さんにはTHETA Z1発売発表会のメインプレゼンターとして登壇いただきました。その発表会では、ボリビアのウユニ塩湖での美しい風景写真をお披露目いただいたことが強く記憶に残っています。谷角さんが世界を股にかけて活躍される写真家になるまでのキャリアについて少し詳しくお話を伺えますでしょうか?

●25歳のとき、全財産50万円でカナダへ移住

私は、はじめから写真家を志していた訳ではありません。カナダへの移住と、その後2つの大きな転機があり写真家としての人生を歩むことになりました。
大学卒業後はアパレル業界で経理関連の仕事に携わりましたが、25歳の時に全財産50万でカナダのウィスラーというところへ移住しました。その根本にあったのは、若いうちにしかできないことをやるのだ、30歳までは全力で好きなことに打ち込もう、という決意です。

カナダでは、もともと好きだったスキーのインストラクターを始めました。インストラクターという仕事ならば、冬はカナダ、夏は南半球のニュージーランドに行き一年中大好きなスキーができるライフスタイルが送れるのでは?と考えたのです。

●オーロラとの出会い

ウィスラーでは母子家庭の部屋を間借りして生活しており、そこで私の主題とも言えるオーロラとの出会いがありました。
ある夜、その母親が「今日は外にNorthern Lightsが出ているよ」と言ったのです。「何ごとか?」と思い、外に出て夜空を見上げると、そこには白く光る帯が現れていました。当時はノーザンライツという単語がオーロラを意味することも、カナダでオーロラが見られることも知りませんでしたが、父親から借りていた一眼レフカメラのことを思い出し、このカメラでオーロラの写真を撮り、日本に戻って見せようと決めました。

そこで、緯度の低いウィスラーではオーロラが見られることは稀なため、オーロラの本場のイエローナイフを目指しました。飛行機だと旅費がかさむので、レストランに張り紙をして車で一緒にイエローナイフに行く仲間を5,6名集めました。目的地のイエローナイフまで2600km、道中はキャンプをしながら辿り着きした。当時はまだカメラの撮影知識が十分ではなかったのですが、36枚撮りフィルムを3ロールで100枚分、試行錯誤しながら撮影しました。ウィスラーに戻り現像するとしっかりとオーロラが写っていた。これが僕とオーロラの出会いです。

●写真家への2つのきっかけ 「アメリカ国立公園での旅」と「写真展」

その後、ユーコン川のカヌー下りにチャレンジするためホワイトホースに移住しました。知り合った旅行代理店でオーロラのガイドを手伝うことになったため、オーロラの写真を撮るチャンスは、ほぼ毎晩と言っていいほど多くありました。

―その当時から写真家としての意識はあったのでしょうか?

いえ、当時は写真家に対する特別な認識はなく、カナダ移住4年目に就労ビザ延長を拒否されたことが転機になりました。
移民局の面接官に「君はカヌーもオーロラも十分すぎるほど楽しんでいる。カナダはもう十分だろ。帰れ。」と言われ、ビザ延長が拒否されました。そんな理由でビザを延長しないのはおかしいと後々裁判を起こしたのですが、ビザが延長されなかった以上は2週間以内にカナダを出国しなければいけない。しかし、書類をよく見ると「Leave Canada」のみで「Go back to Japan」とは書いていない。ということはアメリカに行ってもよいのだな、と思い立ち、アメリカへ3000km移動し、観光ビザで国立公園を巡って日本に帰ろうと思いました。そこから3ヶ月間、5500km、アメリカの国立公園を回りました。この旅の中で「自分が思うタイミングで好きな場所に行きたい」と思うようになりました。それが可能な仕事は「作家」だ!と思い、アメリカの国立公園の旅を写真と文章でエッセイに仕上げようと意識して写真を撮って回りました。

日本に帰国してから、まずはカナダで撮影した4000枚分のオーロラ写真を家族や友人に見せたいと思い、地元の大阪で写真展をしようと考えました。自分で開催するにはお金がかかるので、カメラメーカーで写真展ができれば会場代が無料になるのでは?と思い、当時使っていたカメラメーカーNikonの大阪サロンに行き、「すみません、写真展をしたいんですけど。」と突撃したのです(笑)。そこで「選考があるので東京の本部に写真を送ってください。」と言われるがまま写真を送ると合格できてしまった。東京での写真展では大勢の方が来場して下さり、ご縁があり写真集の出版の話をいただきました。2004年に1冊目の写真集が出て、嬉しくて本屋に並んでいるのを見に行きました。自分の写真集を手にした時に「作家として行きていくならば、一冊で終わるのではなく、新しい作品を続けて生み出していかなければいけない。」と感じ、本腰をいれて中判カメラを購入し、撮影に注力していきました。写真展の後、カナダからビザ延長拒否の件で勝訴したため帰ってきてくれとその旅行会社の社長から連絡がありました。その人に義理があったので再度カナダに移住し、永住権を取得しオーロラ写真を撮りながら仕事をすることになりました。

まとめると、ビザ延長を拒否されカナダを一時的に追い出された先の「アメリカの国立公園を巡る旅」で作家を意識したこと、日本に帰国してからの「写真展」。この2つが写真家として歩むきっかけになりました。

谷角靖さんが考える360度カメラ RICOH THETAの魅力とは

―谷角さんのキャリアを振り返ると、全力でいろんなことにチャレンジされたうちの一つが写真だった、ということですね。パノラマ写真や、360度写真に興味を持ったきっかけはあるのでしょうか?

カナダに移住後は、アメリカの国立公園が気に入り、毎年カナダから撮影に行っていました。
中判フィルムカメラをメインに使って風景を撮影していたのですが、並行してデジタルカメラも使っていました。フィルムとデジタルで同じものを同じように撮影しても面白くないので、デジタルカメラは縦にして6枚撮影して合成し「パノラマ」にしていました。当時のデジタルカメラは1000万画素程度でしたがパノラマ合成すると10年後も十分使える4800万画素クラスの写真が生成できるのです。これがパノラマ写真を始めたきっかけです。初めて360度写真を知ったタイミングは2005年頃です。ある不動産屋が360度の写真を使っているのを見て知りました。この360度撮影をオーロラ写真にも応用しようと思い何度かチャレンジしました。しかし、1枚撮影をしているうちに天体が動くためズレが発生し納得行く仕上がりにはなりませんでした。

それから360度というフォーマットの撮影からはしばらく離れていましたが、2013年にTHETA の初号機が発売された時、単体での360度カメラの存在を知りました。そして画素数などのスペックが上がり十分実用に耐えうると思ったTHETA Vが発売時に購入。シャッター1回で360度全方向映ることは本当に画期的でした。

―もともと合成でパノラマ写真に取り組まれていた谷角さんには、360度が1ショットで撮れることは魅力的だったということですね。

1ショットですべて撮影しきれることはTHETAの最大の魅力だと思います。本来パノラマ撮影はパノラマヘッドといって5kgほどの機材とそれを支える巨大な三脚が必要です。それを考えればTHETAはスマホ程度の軽さで、ポケットにも入ってしまう。こんな便利なものはないです。

私の場合は仕事柄世界中を旅して回るので、限られた荷物重量の中で手軽に持っていけることは本当に重要なポイントです。

―これまでの撮影で、THETAで360度撮影してよかったのはどういったシーンでしたか?

タイのランタン祭りですね。ここでは本当にTHETAの良さが活きました。またTHETAでないとこのようなインパクトのある映像を残すことは難しかったと思います。

この現場では自分の周りにいる数千人が一気にランタンを手放します。みんな記録を残したいのでスマホを手に、あっちを撮ってこっちを撮って、更には自撮りをしてと大忙しで、その場を楽しむ余裕が無さそうでした。今見ていただいているような映像をスマホや一眼レフカメラで撮ろうと思うと不可能に近いと思います。THETAを持っていると全部撮れます。撮影ボタンを押しておくだけです。

世界を旅する風景写真家にとってのTHETA Z1の魅力、撮影のコツ

―これまでの経験から、360度写真の撮り方のコツについて教えていただけないでしょうか?

まず「360度カメラ」なので、撮影するときは360度すべてがキレイな“THETA映え”する場所を選びます。電柱などの写したくないものがある場所は避けるようにしていますね。なので私の場合はTHETAは風景専用機に近いです。超広角レンズの使い方と同じで、なるべくメインの被写体に近づくとインパクトが出ます。

また風景を取る場合は太陽の位置に留意します。太陽が出ているのであればTHETAの正面を太陽に向けて撮影します。つなぎ目のスティッチの位置に太陽は持ってこないほうがいいからです。露出は絞り優先モードを使うことが多いです。露出補正もしないでカメラに任せておけばきれいに撮れますね。

―フラッグシップモデルTHETA Z1では、絞り値が3つ選択可能になるなど従来よりもよりハイエンドな撮影が楽しめるようになりました。谷角さんの撮影設定について教えていただけますでしょうか。 

私は、基本的には絞り優先モードでシーンに合わせて任意の絞り値を設定して使っています。
風景でしっかり写したいときはF5.6まで絞り込むことが多いですが、夜景ではもちろん開放F2.1を選択します。

私はJPEGで絵作りをしており、多少カメラにお詳しい方に向けての知識になると思いますが、ホワイトバランスはオートではなく、太陽がある場所では太陽光など、シーンで統一しておいた方が良いと思います。オートホワイトバランスだとコロコロと色が変わってしまいます。ホワイトバランスのプリセットから選べば、月明かりを取る場合にわざと蛍光灯を選んで青っぽくするなど表現としても使えます。
ケルビンで指定もできますが、私はプリセットのホワイトバランスでやっています。そこまで微妙に調整するならRAWで撮りますかね。

―なるほど、JPEGで絵作りされているということですね。THETA Z1はRAW撮影にも対応していますが、どのようにお考えですか?

最初はTHETA Z1でもRAWで撮影していたのですが、使っていく過程でJPEGでも十分に綺麗ということが分かりました。最近はJPEGのみの設定で撮影する機会が多いです。
RAW+JPEGだとメモリー容量を使うため撮影枚数が減ってしまいます。旅が多い私の用途では写真データのバックアップが大変なことと、インターバルで撮影したときに1枚1枚処理する手間を考えてJPEGで撮影します。
THETAだけでなく、一眼レフカメラを使うときもJPEG設定がほとんどで、条件の厳しいオーロラであってもRAWで撮影することは減りました。
この背景にあるのはメーカーのJPEG生成時のカメラ内ノイズ処理が本当に優秀だということです。

RAWからいきなりLightroom等の画像編集ソフトでノイズ処理をするよりも、一度カメラ内でのJPEGのノイズ処理を信頼する、そしてもし不足があるようであれば後で軽く処理する方がきれいなのではないかなと思います。
私の場合は不足を感じた時の処理には、隠し味程度にPhotoshopプラグイン「DXO」のノイズ処理を使っています。THETA Z1で撮影したJPEGもDXOをかけるだけで非常にきれいになる。比較検証はしたわけではないですが、撮って出しでもISO400位の設定であれば十分すぎるほどきれいです。

THETA Z1本体でのノイズ処理が非常に信頼できることと、+αの自分のちょっとした工夫ですね。

―THETA Z1で、メーカーの画像処理(ノイズ処理)を評価いただき大変うれしく思います。

「RAWで撮らなくちゃ」という思い込みは捨てた方がよいと5年前から僕は思っていました。
デジタルが主流になってもう20年近く経ちますが、各社メーカーの画像処理の専門家・開発者が知恵を絞って開発し続けている。だからもうJPEGの撮って出しを信じていいです。オートフォーカス機能が出始めたころにも「メーカーがつくる機械任せのオートフォーカスは信じられない」といった話題があったが今現在、それを主張する人がほとんどいなくなったのと同じです。

―谷角さんが言うからこそ説得力がありますね。

僕の場合、目の前の風景、その場、その瞬間をどう見せたいかに全力集中しています。
だから常にその場で写真を完成させるんだという気持ちでやっています。

―谷角さんの考えるフラッグシップモデルTHETA Z1ならでは魅力は?

THETA Z1の魅力は、やはり高感度撮影時のノイズが格段に減ったことだと思います。Vと比べると全く違います。トワイライトや夜景などのISOを上げなければいけないシーンでも安心して上げることが可能になり、条件の悪い撮影に本当に強くなりました。

また、風景撮影時であれば、太陽や月の周りのどうしても白飛びしてしまいやすい領域がかなり減って表現力が増していますね。

インターバル合成で星景がとれることもTHETA Z1の良さですね。星のある風景写真を撮りたい方も、インターバル合成で設定して30分程度放置しておくだけでスマホに出来上がりが転送されてくるので試してみたら良いと思います。一眼レフカメラでは数百枚同じ場所で撮影して、専用のソフトで合成なければならないため非常に手間なのです。

またHDRは夜景で暗い場所と明るい街頭などが同居しているシーンで活用しています。実際に使ってみましたが、一眼レフカメラと変わらないほどきれいな絵が撮れました。

―THETA Z1に関しては、360度全域に渡って白飛びや黒つぶれが起こりにくいようにセンサー、エンジン、アルゴリズムを細部まで解像度だけでなく画質にこだわって作っていますので、今ご指摘頂いた部分にも現れているのだと思います。

世界中の様々な場所で、昼夜問わずTHETA Z1を使用し撮影しましたが、どのようなシーンでも自分の意図した通りの写真の仕上がりを収めることができました。

―THETAの撮影においてはプラグインは使用していますでしょうか?

>>Time Shift Shootingを使っています。
自分が写り込まないようにするには、基本的に隠れて遠方からWi-fiで操作、もしくはインターバル設定でレリーズすることが多いのです。しかし−40℃の極寒で動くのが面倒なとき、足場が悪く動きにくいとき、人通りが多い発展途上国などでカメラが盗られるような心配があるときはTime Shift Shootingを活用します。自分がその場を離れたくない場合に活用しており、カメラの近くに居たままでも自分が映り込まないので便利です。

―最後に、THETAに関心を持っている方にアドバイスをいただけますか?

THETAで撮れる360度写真は良くも悪くも構図が重要ではありません。つまり写真に大切とされている構図のセンスが関係ないのです(笑)。
カメラに慣れていない人ほどTHETAを使ってみることをおすすめしたいです。先程のランタンの動画でもお伝えしたようにTHETAだけ持ってその場所に行きえすれば良い。シャッターを押してさえいれば後でスマホで切り取ることもできます。

購入を迷っている方や扱い方に困っている方から「THETAに興味はあるのだけれど、撮影した360度のデータはどう見るのか、どう見せれば良いのか分からない」という意見や質問を良く受けます。私はTHETAを使うのなら、まずは切り出したり紙媒体で表現するという「写真」の前提を忘れると良いと思います。360度の写真/映像は、今いるその場の空気や臨場感を伝えることができるので、ストレートにスマートフォンやディスプレイで360度で見る、見せることを考えれば良いと思います。

「今見ている方向の反対側、足元、場所の雰囲気はどうなっているんだろう。」という閲覧者の好奇心を実際に見せることができるのも360 度カメラの良いところです。例えば、この写真は千葉県君津市のホタルです。ホタルがどういう場所に生きているかという事がわかる。またその次の写真は桜ですが、桜がどのような場所に咲いているかがわかります。

切り取って平面に見せるような使い方を前提にぜずとも、そのまま360度で見せれば多くのことが伝えられると思います。


また、THETAには思い出や記録を残すことができるという面もあります。心に響いた場所でさっとスナップ撮影しておけば360度で思い出が残せます。私の写真の生徒さんも、いまは多くの方がTHETA Z1を持って使っています。もともと風景写真の興味が強い方が大半なので風景用途にも使うのですが、いざTHETA を持つとスナップでの使用頻度も多くなっていくようです。絶景を目の前にしたときに、その風景に自分たちを居れて自撮りや集合写真を撮る方が多いです。後でTHETA のアプリでぐるぐる回して見ることを楽しんでおられます。

そんな光景を見ていると、写真の原点に戻って「記録の楽しみ」を再発見できることがTHETAの魅力であり、また、場所や時間帯を問わずに多様なシーンで高いクオリティの360度写真を残すことができることがフラッグシップモデルTHETA Z1の魅力なのだと思います。

―ありがとうございました。(真砂/大原)

 

写真家 谷角 靖 Tanikado Yasushi

WEB: http://www.yasushi-products.com/
オフィシャルブログ: 「オーロラの降る街-谷角劇場-」
Instagram: @yasushi_tanikado_official
youtube:Yasushi Tanikado

 


 

 

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