皆さん、こんにちは。

今回はTHETA labの特別企画で、360度カメラTHETAのプロダクトデザイナー河 俊光さんが普段かばんに入れて持ち歩いているこだわりの持ち物を伺いました。

河さんが愛用する「モノ」から、彼の頭の中とTHETAに引き継がれたであろう思考に迫ってみたいと思います。

今日はよろしくお願い致します。
さっそくですが河さんのかばんの中身を見せてください。

河さんが普段持ち運んでいるかばんの中身

左上から

・かばんリュック RESISTANT HOPE&BOND
・別府の手ぬぐい
・NEWMANの製図用シャープペン
・POSTA COLLECT はがきサインペン
・LAMY Safari
・Moleskineノート
・iPhone XS
・THETA V
・THETA専用設計自撮り棒 TM−3
・RICOH GR3
・直尺
・JULIUS TART OPTICAL AR(サングラス)
・HIGHTIDE メジャー
・CASIO F-91W
・AirPods
・DIGAWEL X PORTER ポーチ
・Hender Scheme 財布
・友人お土産 ファイル

特にお気に入りのプロダクトはありますか?

一番のこだわりと言われると難しいですが、このチープカシオのデジタルウォッチがとても好きですね。
私は安くて簡素なモノにプロダクトとしての軽やかな魅力を感じます。

そのほかで言うとNEWMANの製図用のペンとファイルになります。

このペンは友人の叔父の遺品整理を手伝っているときに一目惚れし、譲り受けたモノです。
私の手に渡ったその経緯やストーリーも自分にとっては特別なのですが、シンプルにプロダクトとしての力が強いです。グリップ部分の溝が螺旋状に刻まれているのですが、旋盤加工の効率から導かれた良いデザインだと思いました。

このファイルは美大生時代に、大学の友人からもらったスウェーデンお土産です。縞鋼板のテクスチャーが面白かった。
特に強いこだわりがあるわけではないのですが、どこか手馴染みが良く使っていて心地がいいので気がつけばもう10年以上愛用していますね。

私が使っているカメラはGRIIIとTHETAです。
THETAの撮影には自撮り棒TM-3を使用しております。専用設計なだけあってバランスやサイズ感含めて一番使いやすいと感じます。

今日は河さんが影響を受けたという柳宗理、柳宗悦の本もお持ち頂きましたが、河さんはこの本からどのような事を学ばれたのでしょうか?

まず、民藝とは「民衆的工芸品」のことを指し、「一般の民衆が日々の生活に必要とする品にこそ美しさがある」という考え方です。これを提唱したの明治の思想家柳宗悦。その長男の柳宗理はバタフライスツールという成型合板を重ねた椅子などで有名なプロダクトデザイナーです。

民藝を構成する要素は9つあり、「実用性」「無銘性」「廉価性」「複数性」などが挙げられます。当時の工芸品は、職人の属人的な技巧によって一点モノを作ることを崇めていました。宗悦はそれに対するカウンターとして、名もなき職人たちが民衆のために安く大量に生産するもの、作りやすさを求め生産不要な部分が削ぎ落とされ必然として生まれた形にこそ「健康的な美しさ」があると説いたのです

私は現代のプロダクトデザイナーなので、
手工芸品だけでなく、工業製品にもこの考え方を適用したらどうなるだろう、という問いかけを自分の活動のテーマにしています。例えば先程のチープカシオはまさにその具現だと感じます。

他に私が感興を覚えるのはポリバケツです。
日用品であるポリバケツは、成形時に金型から効率よく離型できるよう、抜き勾配が大きく付けられていますが、このようなものづくり上の制約が、造形としてのアイコンに昇華されています。そして皆が使う日用品ゆえに、「このデザインは凄いだろう」「これは誰のデザインだ」と主張しない無銘性があります。私はここに工業製品における民藝的アプローチを見い出します。

THETAはどういう思いでデザインされたのでしょうか?

何かを参考にしたということはありません。
THETAはレンズの光学や基盤、バッテリーといったレイアウトの制約がある程度決まっていて、それをクリアしつつ小学生でも書けるようなラインに纏めていくことでTHETAの姿かたちが現れました。

私はカメラや車といった、子供でも特徴をとらえて描けるようなデザインこそが力強く美しいと思っています。

THETAはどちらかといえばデザインコンシャスの製品です。360度を撮影できるカメラというアイデアを、これまで存在しなかった具体的な形へと落とし込むことが出来た点に、プロダクトデザイナーとして携われた意義を感じます。

THETAは2013年の発売以来ラインナップを更新していますが形は大きく変わっていません。これは消費需要をいたずらに喚起するための表面的なデサインを積極的に採用しないということです。
プロダクトとして歴史を積み重ねていくなかに、根本や本質を変えないということの重みを感じます。

河さんありがとうございました。(取材撮影:大原)

【河さんよりお知らせ】

リコーのデザイン部門と東京都大田区町工場8社による、ものづくりの展示会”GOOD ENOUGH.”を2019年9月に開催します。
民藝の思想にあるような、ものづくり上の制約をポジティブに変換し、個性として仕立て上げることで、簡素な作り が醸し出す健康的な美しさを追求します。

お気軽にお越しください

特設webサイト:https://jp.ricoh.com/design/good-enough.html
インスタグラム:https://www.instagram.com/goodenough_tokyo/

展示会概要

GOOD ENOUGH – SMALL FACTORIES AND RICOH DESIGN –
会期: 2019年9月18日~9月29日(会期中無休)
会場: GOOD DESIGN Marunouchi
住所: 東京都千代田区丸の内3−4−1 新国際ビル1F
会場URL: https://www.g-mark.org/gdm/index.html
開館時間: 11:00-20:00
観覧料: 無料

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