RICOH THETAシリーズの新製品、RICOH THETA X。どのような背景で作り上げられたか、その裏側のエピソードを、プロジェクトのメンバーにインタビューしました!

THETA X の企画

THETA Xは、どのような背景で企画されたのでしょうか?

清水(企画):2013年に全天球イメージをワンショットで撮影することができる世界初の画像インプットデバイスとして誕生したRICOH THETAは、2021年までに7機種を発売し、現在では3つの機種でラインナップを構成するまでに成長してきました。

清水祐輔 (商品企画)

当初のTHETAはコンシューマーを中心に、新しい映像体験に価値を感じていただけるイノベーターの方を中心として広がっていきましたが、次第にカメラ・写真好きの人や、SNSのコミュニケーションで活用する人、旅行の記録をする人など様々な方に使っていただけるようになりました。また、360°映像が普及するにつれて、目新しさだけでなく、画質や操作性、耐久性や使いやすさなど、非常に沢山のご要望をいただけるようにもなりました。

そこで次機種では、これまでTHETAでは対応してこなかったご要望に1つ1つお応えしていくことで、これまで以上にTHETAを活用していただくとともに、さらに多くの方々にTHETAを使っていただきたいと考えるようになりました。

THETA Xのユーザーターゲットは、当初はビジネス用途ではなく、コンシューマー用途を想定していた、ということでしょうか?

清水(企画):具体的には「テクノロジーに興味のある人々」を、当初ユーザー像としてイメージしていました。プライベート利用・ビジネス利用は問いません。THETA SやTHETA Vも、そういったユーザーの方々が多いと感じていたためです。

榎並(PM):この機種のユーザーのペルソナについて、毎日メンバー同士で議論続けた時期もありました。その議論の中で、「テクノロジーに興味のあるユーザーは”何かを便利にしたい”というマインドがあるのでは」と考えました。「何かを便利にしたい」というマインドの方が増える場合、よりビジネスシーンに、THETAの利用が広がってくるのではとイメージしていました。

榎並英司 (Product Manager)

清水(企画):その頃は、ちょうどコロナ禍が始まった時期でもあります。THETAはそれまでも、ビジネスシーンでの利用が徐々に広がっていたのですが、コロナがきっかけとなり、360°画像がバーチャルツアーをはじめとしたビジネスシーンで、全世界的に広まっていきました。そのような背景の中、この機種が発売される2022年頃には、確実にTHETAの利用はビジネスシーンがメインになっていくと考えました。そこで、新機種のコンセプトを「仕事や生活で役立つプラットフォームカメラ」と位置づけたのです。

確かにコロナがきっかけで、不動産物件のバーチャルツアーなど、360°画像を目にする機会は以前よりも増えましたね。

清水(企画):THETA Xでは、APIやプラグインでの開発のしやすさを、従来機と比較してもっと充実させたいと考えていました。大型タッチパネルを搭載したことで、プラグインもより使いやすく・開発しやすくなりました。さまざまな外部のベンダー様にもTHETA Xをシステム連携して頂き、ご活用頂きたいと思っています。

THETA X / 11K / HDR

THETA Xのデザイン

THETA Xでは、大型タッチパネルが搭載され、シャッターボタンの形状も半月型に一新されましたね。

河(デザイン):THETA Xは、THETA Z1とTHETA SC2というTHETAのラインナップの中で、より使いやすく先進的な操作性を兼ね備えた、アドバンスドモデルとして企画されました。シリーズで初めて大型タッチパネルを搭載するモデルのため、従来のTHETAから大きくデザイン構成が変わります。そのため開発当初から、ボタンやレンズ周りを含めた全体デザインについて、開発メンバーたちと何度も検討を繰り返しました。

河俊光 (プロダクトデザイン) *左

設計面で苦労した点はありますか?

高橋(メカ):タッチパネル液晶のガラス部分とシャッターボタンの設計は、苦労したポイントのひとつです。THETA Xはデザイン側の要望も組み入れ、タッチパネルの周りも含めて一枚のガラスで構成しました。色々と設計方法を検討した結果、すっきりとした見た目になったと思います。

榎並(PM):本体のサイズについても、モックアップをたくさん作ってメンバーで何度も確認しましたね。本体やシャッターボタンの色味・光沢など、細かい部分も、みんなでこだわりながら議論しました。

シャッターボタンの安定性については、何度も試作機を触りながら皆さんで検討されていましたね。

河(デザイン):THETA Xのシャッターボタンは従来よりも大きな形状ですが、直線部分を軸にして、どこを押しても安定的にシャッターを押せるよう、設計区に工夫して頂きました。

高橋(メカ):THETA Xでは、初めて交換可能なバッテリーとSDカード対応が命題になっていたため、それをどう設計上対応させるか、という点も悩みました。最終的に、デザイン性も考慮して側面に入れる形状にしています。

THETA Xのマーケティング施策

THETA Xのマーケティング面で難しかった点はありますか?

平川(マーケ):THETA Xには色々な機能的特徴がありますが、THETA SC2やTHETA Z1など、他の機種と違って何が特徴なのか?を分かりやすく伝える必要がありました。やはり一番の特徴は、大型タッチパネルを搭載したことで「誰でもスマホライクに、とても使いやすい」機種であることだと思います。
Web上のクリエイティブでも、「大型タッチパネルが搭載されて使いやすい」という点を、視覚的にも伝わるよう、意識しました。

THETA X / 11K / HDR

RICOH THETAには3機種しかありませんが、それでもどの機種を購入すべきか、迷ってしまうお客様も多いと思います。どういうニーズがある方にはどこの機種をという点を、今後も分かりやすく訴求する必要があると思っています。

平川絵理(商品マーケティング)

真砂(マーケ):THETA Xの開発が進む中でも、並行してお客様のヒアリング調査を数多く実施してきました。「スマホに接続することがネック」という声を多く頂いており、そういったお客様に対しても、THETA Xは使いやすい機種になったと思います。

真砂秀樹(商品マーケティング)

新機種の立ち上げで楽しかったことは?

真砂(マーケ):THETA Xは大型タッチパネルを初めて搭載し、UI(ユーザーインターフェイス)も新しくなるなど、初めての仕様が多い機種でした。自分たちでもユーザー目線でテストしながら、「ここが使いにくい」など、感じたことをすぐにフィードバックし、設計開発のメンバーがそれをすぐに改善検討してくれたりもしました。

平川(マーケ):THETAの設計開発はとても少ない人数ですが、少数精鋭で、皆さんひとりひとりが「良いものを作りたい」という意識が高いと思います。モノづくりに関わる仕事は、メーカーで働く醍醐味のひとつだと感じました。

THETA Xのユーザーマニュアル

THETA Xリリースのタイミングに、Web上で公開しているHTMLマニュアルも変更しましたね。

中村(マニュアル):以前からWeb上のHTMLマニュアルを使いやすく見直そうという話があり、THETA Xのタイミングですべて一新しました。例えば、最初の機種を選択するページに各製品画像を加え、一目でどの機種を調べたら良いか分かるように変更しました。
また、検索バーを新たに加えました。それによって、調べたいキーワードを入力することで、該当する説明箇所をすぐに見つけることができるようになりました。他の機種のWeb上のマニュアルでも、すべて同様に変更しています。

中村健一(マニュアル)

THETA Xは大型タッチパネルを初めて搭載し、THETAとしてのUIも大きく一新しました。マニュアルの制作も大変だったのではないでしょうか。

中村(マニュアル):本体タッチパネルはすべて新しいUIだったため、大部分はゼロからマニュアルを作りました。各機能に対して、どれだけ簡潔に分かりやすく説明するか、ということを意識しました。

新しくなったユーザーマニュアル

これまでカメラ含めて、色々な機種のマニュアルを担当していましたが、ここまで新規で作り変えるプロジェクトはなかったと思います。毎週一緒にマニュアルの内容を議論し進めてくれた、関連メンバーのおかげです。

THETA X / 11K / HDR

THETA Xの今後

榎並(PM):この機種は、もともとコンシューマー用途を強く意識して企画されました。タッチパネルの操作性など、一般の方にも使いやすいようにUX(ユーザーエクスペリエンス)の向上を目的に作り込んでいるため、誰でも使いやすい機種になったと思います。エンタープライズのようなビジネス用途だけでなく、空間を扱う仕事をされているような様々なスモールビジネスの方々にも、THETA Xを便利に使って頂きたいと思います。色々と機能的なご要望も出てくると思いますが、今後はプラグインやファームウェアアップデートなどで、出来るところは対応していきたいです。

清水(企画):ぜひ、仕事とプライベートと両方で、活用される機種になってほしいと思います。仕事用途で使い始めて頂いても、プライベート用途からでも、どちらでも構いません。どんな場面でも活用される機種になると、嬉しいです。

次回は、UI企画・設計に関するエピソードをお届けします!

編集:平川
撮影:大原

360 photos at Chambre-dhote-retraite in Yokosuka, Japan

サイドバナー