総合建設会社・淺沼組の「人間にも地球にもよい循環」をつくる「GOOD CYCLE PROJECT」という環境配慮型リニューアルのプロジェクトが、昨年4月からスタートしました。

土や木など自然素材の活用や廃材のアップサイクルといった、地球にやさしい建材の活用だけでなく、既存建物の良さを活かして環境にやさしいリノベーションを推進するという、「ReQuality」をコンセプトにしたプロジェクトです。

その理念を自ら体現するために、築30年の名古屋にある淺沼組の自社ビルを、環境配慮型ビルへ大幅リニューアルしたことが、昨年業界内で大きな話題になりました。

2Fラウンジから撮影

そのプロジェクトを設計リーダーとして推進された、一級建築士でもある淺沼組・名古屋支店長の長谷川様は、360度カメラ RICOH THETA(リコーシータ)のユーザー様です。

今回は、淺沼組のフラッグシップ・ビルとなった話題の淺沼組・名古屋支店を、RICOH THETA Z1で撮影した360度のバーチャルツアーでご紹介しながら、支店長の長谷川様に、名古屋支店改修プロジェクトの背景やお仕事でのTHETAのご活用についてお話を伺いました。

淺沼組 名古屋支店 支店長 長谷川清様

淺沼組・名古屋支店改修プロジェクトについて

改修された名古屋支店は、まるでそびえ立つ樹のように、外観からも自然に溶け込む特徴的な建物ですね。プロジェクトの構想のきっかけについてお聞かせください。

現在、淺沼組は新築建設の案件がまだ多くを占めていますが、今後は新築よりもリニューアル・改修工事が増えていくだろうと考えています。今後、環境にやさしい既存建物のリニューアルにより一層力を入れていきたいと考える中で、企業のリニューアルブランド自体も一新していこうということになりました。

淺沼組 名古屋支店 全景

今年(2021年)の4月に、「ReQuality」をリニューアルブランドとして立ち上げることにしたのですが、理念だけ言ってていてもそれを説明することはできません。そこで新しい理念を体現させる「実物」が必要になると考えました。そこで、淺沼組の新しいブランドのフラッグシップとして、名古屋支店の改修の構想を開始したのです。

設計をお願いした川島範久建築設計事務所と、約2年半前から構想を開始し、完成までの施工期間は約1年2か月を要しました。

1Fの360 度バーチャルツアー 

※矢印をタップすることで、空間を移動して見ることができます。また、カメラマークやメモマークで、各場所の注釈も見ることができます。

新築ではなく既存建物をリニューアルすることで、CO2を大きく削減できるそうですね。

新築の建設の場合、既存の建物を壊してから新たに建て直すため、CO2をかなり排出します。今回の名古屋支店改修プロジェクトでは、既存躯体の活用と自然素材の利用により、新しく建て直した場合と比べて製造・建設時のCO2排出量を約85%削減することができました。

また、高効率設備の導入などの省エネ改修も同時に行い、改修後オフィス運用時の基準一次エネルギー消費量を、約50%以下に抑え、ZEB Readyを取得しました。

階段の各階にも改修プロジェクトのエピソードが紹介

また、自然通風や土・木・植物といった自然物に囲まれる環境とすることで、オフィスで働く人たちがストレス少なく快適・健康でいることができる空間になると考えています。今後、「WELL認証」も取得予定です。

壁などもすべて自然素材なのでしょうか。

実際の建設現場で使った残土を社員たち自らふるいにかけ、ベンガラ等の色のある自然素材を混ぜて壁にしました。土壁の大半は、社員たちが指でスジを付けたり、土を投げつけるなどの仕上げに参加しました。実際にオフィスで働く社員が工程に関わることで、建物に愛着を持ってもらうことも目的としています。

社員の手でスジをつけた土壁

また木については、淺沼組が奈良県と縁が深い企業ということもあり、建物外観の柱部分も含めて随所で吉野杉を使用しています。

建物の随所に淺沼組さんのこだわりが詰まっていますね。長谷川さんご自身が苦労された点があれば、教えてください。

今回の名古屋支店改修プロジェクトは、私たちにとって全てが初めての試みでした。使った素材は、すべて見本を作ってひとつひとつ確認したり、川島さん(川島範久建築設計事務所)と相談をしながら検討し、施工を開始するまでもかなり時間をかけて進めました。

2Fの360 度バーチャルツアー 

※矢印をタップすることで、空間を移動して見ることができます。また、カメラマークやメモマークで、各場所の注釈も見ることができます。

また、家具や植栽、照明、音響含め、数多くのデザイナーの方々にも参加して頂いています。吉野の山の中で実際に撮った虫の羽の音など、高周波で人間が聞こえないような自然の音源も、すべてそのままオフィスで流しています。

7-8Fの360 度バーチャルツアー

※矢印をタップすることで、空間を移動して見ることができます。また、カメラマークやメモマークで、各場所の注釈も見ることができます。 

社員のストレス軽減にも良いオフィス環境になったと考えているため、今後は定期的に社員のストレスチェックを行い、数値的に効果を検証していきたいと考えています。

360度カメラ THETAの活用について

設計士でもある長谷川さんは、お仕事でTHETAを活用されているそうですね。使い始めたきっかけを教えてください。

3年くらい前に、新しい工事の案件の現場説明会に参加したとき、他のゼネコンの担当の方達が皆、手を高くあげて何かでパシャパシャ撮っていたのを見たことがきっかけです。何だろうと思って後で調べたところ、皆が使っていたのは「THETA(シータ)」という360度カメラだと知りました。

現場調査で普通のカメラしか使っていなかった自分たちは、撮り逃しのないようその場で何枚も写真を撮っていたのですが、THETAを使っている人たちは各部屋で1枚だけ360度の写真を撮ればよく、便利そうだなと思い即購入しました。

THETAで撮影している様子

撮影した360度画像は、自分自身の振り返りにも便利ですが、自分ではなく他の人が現地調査に行った場合でも、後から画像を見せてもらったときに、撮影された空間の把握に便利だなと思っています。手でTHETAを持って本体のシャッターボタンを押して撮影しても良いのですが、自分の頭が大きく映ってしまい嫌だなと思い、THETA専用の自撮り棒(RICOH THETA Stick TM-3)も購入して使っています。

社内でも皆さんTHETAをお使いなのでしょうか?

改修案件の現場調査時だけでなく、新築の案件でも、周辺環境の確認として使っていると思います。THETAを使うと、周辺の道路の状況や交通量の様子が、360度で見ることができて分かりやすいのです。社内では何台かのTHETAを、皆で共有して使っていますね。

長谷川様がお使いのTHETAと専用自撮り棒

撮影した360度画像は、他の画像データと一緒にDropboxなどで共有し、各自のPC上のTHETAアプリで閲覧したりしています。また会議の時には、誰かが撮影した360度画像をPCのTHETAアプリで閲覧しながら、大型モニターに映して皆で確認することもあります。実際にTHETAを使ったことがある人よりも、その撮影された360度画像を見る社員の人数の方が多いかもしれませんね。

名古屋支店改修中も、THETAで施工中の現場を撮影されていたと伺いました。

今回設計を担当して頂いた川島範久建築設計事務所は東京に拠点がありました。ちょうど施工期間がコロナの真っ只中だったということもあり、川島さんにそこまで頻繁に名古屋の現場に足を運んで頂くことができない時期もありました。

施工中・施工前の淺沼組 名古屋支店の様子

※右下の「>」マークをタップすることで、他の画像を閲覧することができます。

建築家の川島さんには今回建物の素材も含めて、内部までかなりこだわって設計して頂いたこともあり、自分が週に何度か現場をTHETAで撮影し、360度画像のデータを川島さんにDropboxで共有していました。

改修前や改修中にTHETAで撮影されていた360度画像を見ると、今回の淺沼組 名古屋支店の改修で、劇的な変化を遂げたのが伝わりますね。今後、THETAを活用してみたいと思うシーンなどあれば、教えてください。

今まで現場調査など中心にTHETAを使っていましたが、最近導入し始めたVR営業ツール(EOPAN)でも、THETAで撮影した360度画像を活用できることを知りました。

VR営業ツールEOPANで360度CGを閲覧

EOPANは、改修する案件のBeforeとAfterをCGで作って、お客様にVR的に比較しながらAfterのイメージを見て頂くためのツールです。今まではBeforeの画像もCGでつくっていたのですが、この画像を実際にTHETAで撮影したリアルの360度画像を使えば、より臨場感をもってお客様にBefore/Afterのイメージをみて頂くことができそうです。

ありがとうございます。ぜひ、THETAを色々なかたちで活用してみてくださいね。淺沼組様のGOOD CYCLE PROJECTの、今後の取り組みも楽しみにしています。

淺沼組 GOOD CYCLE PROJECT
編集:平川
撮影:大原

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