コロナ禍の生活自粛により、多くの方々が不安を抱えている昨今に、THETAを使って珍しい取り組みにチャレンジしようとしている方々がいらっしゃいます。長野県岡谷市のうなぎ屋「観光荘」の店主の宮澤健さんと、松本工業高校の生徒3名、徳永さん、竹村さん、白瀬さんです。一見何のつながりも無さそうな彼らがタッグを組み、今秋に「うな重とTHETAを成層圏まで打ち上げ、成層圏まで飛ぶうな重と周りの風景のVR動画を撮影する」という世界初の試み“うなギャラクシープロジェクト”を成功させるため、現在準備を進めています。プロジェクトのきっかけや打ち上げに向けての意気込みなどを伺うために、4名にインタビューしました。

うなギャラクシープロジェクトとは・・・

―プロジェクトの概要について教えてください。

宮澤: 「うなぎを宇宙食にすることを目指すうなぎ屋さんと、宇宙を撮影したいという思いを持つ高校生がタッグを組んで、360°カメラを成層圏に打ち上げて、成層圏で宇宙と地球の録画をするプロジェクト」です。
プロジェクトは、「アクションカメラとうな重を打ち上げる1部」と「THETAとうな重を打ち上げる2部」の、2部構成になっています。なぜ2部構成にしたかというと、機材を回収できなかったり、ちゃんと動作しなかったりする可能性があるため、サポートして頂いている気球屋さん(kikyu.org)からのアドバイスで、1部で気球の動きを予測するためのデータを収集することにしたためです。はじめは、1部でもTHETAを打ち上げようという話があったのですが、スケジュールが厳しかったため、アクションカメラを打ち上げることになりました。1部で収集したデータを元に、2部のTHETAの打ち上げに向けて、今高校生のみんなが頑張って準備しているところです。

うなギャラクシープロジェクトに挑む 白瀬さん、竹村さん、徳永さん、宮澤さん (左から)

―活動のきっかけは何だったのでしょうか?

宮澤: 岡谷市の自転車冒険家の方に、極地でも食べられる食品を提供したいという思いがあり、NASAが宇宙食を安全に製造するために開発したHACCP(ハサップ)という衛生管理の手法を調べているときに、JAXAで宇宙食の公募をしているのを見つけたことが始まりです。そして、JAXAの意見交換会に参加したときに、2023年にISS長期滞在が予定されている古川聡宇宙飛行士が、うなぎの蒲焼を食べたいとおっしゃられていたのを聞いたことがきっかけで、うなぎの蒲焼の宇宙食化を目指すことにしました。

元々、「観光荘」では採用や人材育成などで、コンサルティング会社に支援をしていただいていたこともあり、うなぎの蒲焼の宇宙食化を目指したいと相談してみたところ、偶然、コンサルティング会社内に宇宙部門を立ち上げたいという人がいらっしゃり、ご協力いただけることになりました。

丁度その頃、高校生も気球屋さんに「成層圏のVR動画を撮影したい」と相談していて、気球屋さんと繋がりがあったそのコンサルティング会社から、「成層圏の360°動画撮影に取り組もうとしている高校生がいる」ことを紹介していただきました。

徳永: 松本工業高校では3年生のときに、自分で決めた課題を1年間研究する授業があります。僕は、去年の冬に、「長野県内の高校で7~8年前に宇宙に打ちあげてカメラで撮影をした気球が行方不明になってしまい、最近見つかった」というニュースを見て、自分も課題研究でやってみたいと思い始めました。その後、宇宙ロケットのデザインの開発に携わっている方に相談できる機会があり、その方に気球屋さんを紹介していただきました。気球屋さんから観光荘さんをご紹介いただき、一緒にプロジェクトをやらせていただけることになったという経緯です。

宮澤: 成層圏で360°動画撮影をするためには、資金や実行力が必要ですが、高校生だけで実現するのは難しいため、同じ宇宙を目指している中小企業のうなぎ屋の我々が、クラウドファンディングという形で資金調達をして、その夢を一緒に実現することになりました。うなぎ屋として協力することになったため、地球と宇宙の映像だけでなく、うな重が浮かんでいるのも一緒に撮影するプロジェクトとして進めています。

インタビューの様子

―お互いに難しいことに取り組もうとしていたところで繋がりができ、一緒にチャレンジしてみることになったのですね。高校生に伺いますが、元々宇宙に興味があったのでしょうか?

徳永: そうですね。小さい頃は、テレビで宇宙の映像を見るだけでワクワクしました。ニュースで他の高校生が成層圏に気球をあげた映像を見たときに、すごく衝撃的で自分も挑戦してみたいと思いました。最初はカメラで普通に映像を撮りたいと思っていたのですが、みんなで更に面白いことをできないかと検討する中で、「360°映像を撮れて、それをVRで見ることができたら面白いね」という話になり、そこから360°の映像を撮影することになりました。

―高校生の他の2人は、そういった思いは同じだったのですか?

白瀬: そうですね。僕も小さい頃からすごく宇宙に興味があったため、徳永からニュースを紹介してもらったときに、同様のことを一緒にやってみたいと思いました。

竹村: 最初に何をするか決める時に、徳永と白瀬に誘われたのですが、宇宙というのはみんな興味があると思いますし、僕もその一人だったので、参加することに決めました。自分のカメラで撮影するのでは面白くないので、360°カメラで撮影して、VR動画を他の人にも見てもらいたいと思っています。

―実際に食べるうなぎの状態で打ち上げられていますが、オフジェや袋に入れてではなく、この形態にこだわって打ち上げたのには何か理由があるのですか?

宮澤: 私も当初は袋に入れた方が良いのではと思っていたのですが、気球屋さんから過去の打ち上げの映像を見せていただいた時に、実物を打ち上げた方が映像の説得力が圧倒的に違うことが分かったため、誰が見てもうな重と分かるように、実物を打ちあげることにしました。

―クラウドファンディングで資金を集められているということですが、どんな思いで実施されているのか?を教えてください。

宮澤: クラウドファンディングという形で多くの方々に関わっていただき、プロジェクトにチャレンジする姿や、飲食店が目の前のコロナ禍の苦しい状況にとらわれずに、若い人たちと未来に取り組んでいく姿を見ていただくことで、少しでも世の中が元気で明るくなってほしいという思いがとても強いです。クラウドファンディングのリターン品の「VRで宇宙を見る」体験を通して、多くの方々にワクワクして元気になっていただきたいです。
実際に1部の打ち上げ後は、お客様がお店に来てとても喜んでいました。お客様から「楽しかった!」「元気が出た!」というお言葉や、地元の製造業の方から「私たちもやってみたいとは思っていたけれど、まさか飲食業でこういうことをやるとは思わなかった」というお言葉を頂きました。そのような出来事から、既にプラスの影響を感じています。

1部(アクションカメラ)の打ち上げについて

―1部の打ち上げについて伺います。打ち上げた場所はどこですか?

宮澤: 福島県某所の山中になります。気球屋さんと山梨大学の先生が非常に協力してくださって、どこで打ち上げるとどこに着水するかを大体シミュレーションできていました。それで、本当は打ち上げも回収も海上で実施する予定だったのですが、直前に風の流れが変わってしまったため、残念ながら、別々の場所で行うことになりました。私は回収班になったため、打ち上げ場所には行かずに、回収するときに船に乗って海へ拾いに行きました。

―うなぎの蒲焼を形状が整ったまま打ち上げるというのはかなり難しいと思うのですが、どのような方法を使われたのでしょうか?

宮澤: それは、現物がこちらになるのでお見せすると、このように3点で釣って安定させます。3点でバランスを取って浮かんでいくという感じです。

1部の打ち上げに使用した気球の土台部分。3点で釣って安定させるところを実演してくださった。

―飛行中に揺れたりはしないのですか?

宮澤: 打ち上げの動画を見ると、結構揺れています。結構揺れているのですが、成層圏まで行くと風が無くなるので、安定します。成層圏に行くまでに耐えられるだけの強度を持たせられれば、成層圏では撮影が安定します。

―揺れたときは載っているうなぎが落ちる可能性があると思いますが、回収時の写真(以下)でもうなぎが綺麗に載っているように見えました。何か仕掛けがあるのでしょうか?

宮澤: ご飯は実物を載せるとパラパラ落ちるので、ダミーの発泡スチロールです。うなぎは本物で、実は皮の面だけかなり特殊な糊でくっつけています。

海に落下後、船上に回収された気球とうな重。うなぎは皆さまで召し上がったとのこと。

―気球は風船のようなものを使っているように見えましたが(以下写真参照)、何が入っているのですか?

宮澤: 生ゴム素材の風船にヘリウムガスが入っています。

―最高到達点というのは予め決められていたのですか?

宮澤: 気球は生ゴム素材でできているため、気圧が低くなると風船部分が膨らんでいきます。同時に、周囲の温度で生ゴムが凍って、内部のヘリウムの圧が増えたときに、自動で破裂して、パラシュートが開いて降りてくる仕組みになっています。そのため、実は気球が降りてくる高度は予め決めていません。それから、搭載するものが軽ければ軽いほど高く上がっていく仕組みになっています。

―うなぎを回収されるときは、GPSなどで場所の特定をされたのですか?

宮澤: はい。気球にGPSが入った機械が装着されています。

気球の風船部分にヘリウムガスを注入している様子

2部(THETA)の打ち上げについて

―2部の打ち上げに関してですが、時期や場所は今の時点で決まっていますか?

宮澤: 11月末に打ち上げられればと思っています。はじめは松本工業高校のグラウンドから打ち上げる予定でしたが、季節の風を考えると、どこかの陸上に落ちる可能性が出てきました。安全面を考慮すると、陸上で回収するのは非常に危険を伴うので、海上で回収できる打ち上げ地点を考えています。直前まで風などの様子を見て、可能であれば松本工業高校から打ち上げますが、別の場所から打ち上げる可能性もあります。

―打ち上げ場所はどのくらい前に分かるのでしょうか?

徳永: 風や当日の天候があるので、その頃にならないと分かりません。

―一般の来場者が観に行くことはできるのでしょうか?

宮澤: 高校で打ち上げる場合は、高校側の判断になるかと思いますが、打ち上げ地点に移動を伴う場合は、来場者はお断りさせていただくと思います。

―360°カメラには様々な種類がありますが、今回THETAを選んでいただいた理由をお聞かせください。

徳永: THETAについては、元々は知りませんでした。360°カメラのことはよく分かっていなかったため、ネットなどで360°カメラやVRなどを調べるまでは「そういうものがあるのだな」くらいの感覚でした。カメラでどう撮影するかを検討したときに、「360°カメラでVR動画を撮影するのはどうか?」という案が出て、調べているときにリコーさんのWebページなどを見て、THETAを選びました。

―2部の打ち上げに使用するTHETAには、特別な仕組みなどは入れていますか?

徳永: 打ち上げから宇宙までずっと撮影できればと思っていましたが、1回に25分まで撮影できるのを知りまして、THETAのシャッターボタンを遠隔で押すプログラムを作成する工夫をしました。それから、THETAを入れるケースを3Dプリンターで制作しました。

2部の打ち上げ用の気球の土台部分の試作品。青いケースは3Dプリンターで制作。

―その他に、苦労していることや工夫していることなどがありましたら、教えてください。

徳永: 軽い方が高く飛びますので、載せるものは軽くすることが重要で、それに苦労しています。あとは、成層圏付近でTHETAが太陽光の熱で高温になり電源が落ちてしまう可能性があるため、THETAの熱を放熱して電源が落ちないようにするための対策を、気球屋さんと考えています。

―2部の打ち上げに対する意気込みを教えてください。

徳永: プロジェクトを始めてから大分経ちますが、もうすぐ本番が来るのだなということを改めて感じていますし、振り返ってみると、すごい方々に出会えて一緒にやれているのが素晴らしいことなので、この経験はこれからも自分の中で大切にしていきたいと思います。2部の打ち上げはとにかく頑張って成功させたいと思います。

竹村: THETAの打ち上げは、2部でぶっつけ本番になるので、失敗が一番怖いのですが、まだ時間はあるためこれから改善などをして、支援してくれた方々や応援してくれている人たちにも、VR映像を見てもらいたいです。一緒にやらせていただいている大人の方々との経験も重要ですし、良い思い出になると思いますので、これからしっかり熱などの対策も考えて、絶対成功させたいと思っています。

白瀬: やっぱり高校生だけの力ではこんなに大きなプロジェクトはできなかったと思いますし、僕たちをサポート頂いた先生や、クラウドファンディングで支援してくださった方々の期待に応えるためにも、熱対策などの僕たちにできる最大限のことを十分に研究して、絶対に打ち上げを成功させたいと思っています。

宮澤: この3人と出会ったとき、彼らは「どうしよう・・・大事になっちゃったぞ」という感じでおどおどしていたのですが、クラウドファンディングで本当に多くの方々にご支援いただく中で、みんなの表情も変わり、会うたびにすごく精神的に成長している姿を見ることができています。2部を成功させて、それが良い経験になって、人生の糧になってくれればと思います。色々な方にこうして取り上げていただけることが非常にありがたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。

クラウドファンディングのリターン品についてご紹介

うなギャラクシープロジェクトは、以下のサイトでクラウドファンディングを行っています。

クラウドファンディングサイト: https://camp-fire.jp/projects/view/498869

ここからは、クラウドファンディングのリターン品について、宮澤様に伺いました。

―クラウドファンディングにはどのようなリターン品がありますか?

宮澤: どのリターン品にもついてくるのが、撮影したVR動画*と、それをスマホで見るためのVRの簡易ゴーグルになります。それから、「うなぎ屋さんがやっているクラウドファンディングなので、うなぎも食べたい」という声がありましたので、シルクうなぎ(下記)や、我々の目指す宇宙食の開発と同条件で作った宇宙うなぎも出させていただいています。それらを組み合わせてリターン品としています。

*VR映像については、10月に松本工業高校の校庭でテスト撮影済み。同様の成層圏付近のVR動画を入手予定。
https://youtu.be/lVJn6djwNN4

―どのリターン品がおすすめでしょうか?

宮澤: 実はシルクうなぎ付きのリターン品が一番人気です。VR動画で疑似宇宙旅行をしながら宇宙でうなぎを食べるということを体感していただきたいので、シルクうなぎ付きのリターン品はおすすめですね。

【シルクうなぎ】
シルクうなぎは、宮澤様が考案された長野県岡谷市のブランドうなぎです。
宮澤様は、うなギャラクシープロジェクトの発足前から、このシルクうなぎの開発に力を入れてきました。
国産うなぎは旬を外れると味が落ちるため、旬以外の時期は安全性をクリアした輸入品に頼らざるを得ないことが課題でした。輸入品に依存しすぎずに、国産で美味しいうなぎをお客様に安定して提供し続けるため、これまで関係性が遠かったうなぎの生産者に相談をし、一緒に養殖をやっていただけることになったそうです。地元の岡谷市の地域性を出すことを考えたときに、かつて絹糸産業で繫栄し、現在も製糸工場が存在する岡谷市のシルク(蚕)のさなぎは栄養価が高く、鯉などの餌としても使われているため、これをうなぎに食べさせて、シルクうなぎとしてブランド化しています。
シルクうなぎは、肉厚でふっくらしている点が売りですが、それ以外に、最近大学で栄養分析を行った結果、通常のうなぎよりもDHAが高くカロリーが少ない為、美容に良いことも分かったそうです。

シルクうなぎは宇宙食化を目指しており、現在JAXAで評価中です。
栄養価が高くて美味しいだけでなく、近い将来、宇宙で食べられるかもしれないうなぎですので、皆さんも是非この機会に入手して、VRで宇宙旅行を楽しみながらシルクうなぎを味わってみてください!

うなギャラクシープロジェクト応援ページ
Webサイト:

やなのうなぎ観光荘: https://kankohso.co.jp/
松本工業高校 うなギャラクシープロジェクト: https://matsukokikyu.jimdofree.com/
クラウドファンディングページ: https://camp-fire.jp/projects/view/498869
Instagram:
@kankohso (https://www.instagram.com/kankohso/)
@unagalaxy (https://www.instagram.com/unagalaxy/)

※規格外の環境でのTHETAの使用は、お客様自身のご判断と責任のもと、実施していただいています。

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