空間を見たままに表現することができる、360度カメラRICOH THETA(リコーシータ)の画像。

視界を越えた360度空間を瞬時に記録することができるTHETAは、建物のバーチャルツアーだけでなく、仕事の進捗の確認としても、広い業種で活用されています。

建築設計の仕事も、そのひとつ。

大阪・四天王寺にアトリエを構える奥和田健建築設計事務所主宰・奥和田健さんは、住宅やオフィスの他、カフェやリノベーションなど、さまざまなジャンルの建築設計・デザインを手掛ける建築家です。シンプルで開放的な空間作りは、国内でも注目を集めています。

頻繁に施工の現場にも足を運ぶ奥和田さんにとって、お使いのTHETA SC2は「施工中の進捗確認」でも最適だったとのこと。

そんな奥和田健さんの東京での作品「Tの家」が、ちょうど完成したという連絡を頂きました。

「Tの家」外観

奥和田さんが手がけた「Tの家」の空間をTHETA Z1で撮影し、360度のバーチャルツアーにして紹介させて頂きつつ、施工中の現場確認でも役立ったというTHETA SC2のエピソードも、ご紹介します。

建築家・奥和田健さんが手がけた「Tの家」

「Tの家」バーチャルツアー by RICOH360 Tours

「移動と滞留」

この2つについて、最近考えることが多い。

今回、移動と滞留のための外部空間を、二つの世帯の間に通し、住居の構築を試みた。

前面道路から、建物の中に入り、コンコースを通り抜け、

緑が広がる裏庭へ出て、屋外階段を上がると、屋上へ直接アクセスできる。

その屋上には、ペントハウスのような「はなれ」があって、そこへも直接入れる。

「Tの家」2階のはなれ

屋上からは住居へも入ることができる。室内の階段を使い1階へと降りれば、中央コンコースへと出ることができる構成。

コンコースは二世帯の間にあり、生活の軸線。

「Tの家」1階コンコース

移動の途中で、立ち止まり話をしたり、移動の途中で都市風景を感じたり。

住居に「移動と滞留」の空間を組み込む試み。

※奥和田健建築事務所HPより

奥和田健さんと建築デザイン

奥和田さんが建築の道に進んだきっかけを教えてください。

20代前半まで、音楽が好きだったので、ジャズのバーで働いていました。当時のお客さんに、芸術・デザインに詳しい方がいて、色々と話を伺い、美術館に行ったりしたことが、この業界に興味を持ち始めたきっかけです。

その後、建築事務所に希望して採用されました。一級建築士の資格を取ったのは、33歳の頃です。建築事務所で働いて、5年で独立を決めました。

独立したばかりの頃は、依頼が1年に1件あるかないかでした。最初は生活していくのもやっとでしたが、ちゃんとこの仕事で生活していけるようになったのは、30代後半の頃でしょうか。

Tの家 2階

交友関係や、友人のつてで依頼が徐々に増えていき、最近はホームページや事務所のInstagram等、SNS経由でご依頼を頂くことも増えてきました。とはいっても、小規模の建築事務所のため、案件は私が直接見れる範囲の年に数件と抑えています。

奥和田さんが手がける作品は、開放的な空間設計がどれもとても素敵ですね。どのような建築思想で手掛けられているのでしょうか?

自分の建築デザインの思想は、子供の頃に自分が住んでいた家の体験が、根底にあると思います。子供の頃、小学生に入る前くらいから、自分の部屋が「離れ」にありました。夕食後、自然を感じながら渡り廊下を通って、自分の部屋がある離れで寝る。そういった体験です。

Tの家 2階「はなれ」

依頼をしてくださる方は、自分のそういう体験に共感してくださる方が多いです。今回の「Tの家」もそうですが、施主の方がお仕事の事務所としても活用するための、独立した「離れ」をつくったり、建物の中でも、独立した空間を大切にしています。独立したスペースを保ちつつ、いかにメインの空間と調和させるか。そういった点に、こだわって設計しています。

「Tの家」リビングスペースの階段

THETAと建築設計・施工管理

THETAは奥和田さんのお仕事の、どのようなシーンで活用されているのでしょうか?

THETAは使い始める前にWebの情報を色々調べていた中で、「リノベーションなど既存住宅の現場調査で役立つものなのかな」という印象がありました。ただ実際に使ってみて、今回のような新築物件の施工中の進捗管理でも役立つと実感しています。

建築設計士さんも、施工中の現場に足を運ぶのですね。

私たち建築設計士は、図面と施工の進捗が合っているか監理する責務があるため、施工中も週1回程度は定期的に現場に足を運びます。

ただ、現場は複数あり、また、今回の東京事務所で受けた案件のように私の活動拠点である大阪から遠隔だったりと、私自身が現場に行くことができないことも多々あります。

そんなとき、事務所のスタッフにTHETAで施工中の現場で撮影してきてもらい、その360度画像を共有して見せてもらっています。そうすることで、現場に行けなかった私自身も、進捗をリアルにチェックすることができるという利点がありました。

THETAで撮影された360度画像をチェックして、ある場所の部材がイメージと違ったため、変更を依頼したこともあります。また自分で撮影した360度画像を使って、現場では気が付くことができなかった所を後から気が付くこともあります。

人の目は前方向にしか向いていないため、どうしても見逃してしまう箇所も出てきます。一方、360度カメラのTHETAは、ワンショットで自分の視界を越えた後ろもすべて、記録に残すことができるのです。

「Tの家」リビング キッチン

THETAで撮影した360度画像は、どのように他の方と共有されているのでしょうか?

THETAで撮影した360度画像データは、元データを社内のサーバーに保存して他のメンバーと共有しています。360度画像はそのままでは閲覧できないため、メンバーには自分のPC上に、THETAアプリをダウンロードしてもらっています。

業者さんなど外部の方へのシェアは、共有したい箇所を360度から切り出して、通常の画像として共有しています。

いつもどのようにTHETAで撮影されているのでしょうか。

撮影は、ミニ三脚と一脚を連結させて、少し高さを付けて立て、遠隔で隠れて撮影しています。手で持ってそのままシャッターボタンを押すこともありますが、できるだけ自分が映らず綺麗に撮影したいなという気持ちがあります。

撮影モードはいつもオートで撮影しています。施工中の現場は薄暗いこともあるので、もう少し明るく撮影できるといいですね。

屋内で固定されて撮影している場合は、HDR合成に設定して撮影すると、明るくきれいに撮影できるので、おすすめです。ぜひ次回試してみてくださいね。

なるほど、HDR合成は使ったことがありませんでした。ぜひ試してみたいと思います。

もっとTHETAでこんなことができたら使いやすいのに、と感じる点などはありますか?

THETAは、撮影した画像を一旦スマホに引きとり、そこからデータを相手に送るなど、何らかの形で共有するステップが必要かと思います。例えばスマホだと、撮影した画像はすぐにiCloud上に保存されて、他の人とそのままそこで共有するということもできます。

何しろ現場では忙しく、なるべく手間を省いて仕事をしたいため、スマホのように撮影→共有までの流れが、もっとシンプルになると、360度画像がより使いやすくなりそうですね。

ただ、今はTHETAだけでもあれば、今までよりももっと仕事が便利になったと感じています。今後も活用していきたいと思います。

ありがとうございます。今後も、奥和田さんの素敵な作品を楽しみにしています!

Tの家

HP:奥和田健建築設計事務所

編集:平川

撮影:大原

360度画像撮影:平川※THETA Z1で撮影し、RAW現像

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